LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)を考えてみよう(弊社の立ち位置)


住宅の省エネルギー界隈は、高気密高断熱、ゼロエネ住宅などという言葉を生み出しつつ、最近では「LCCM」という概念を主張し始めました。

弊社は、それぞれに豊富な実績があり、より高い水準も対応可能です。

それぞれのキーワードの持つ意味や手法も熟知しており、ご要望に応じた最善の方法で対応することができます。

このように、これらの住宅性能を実現することはむつかしくないという前提で、今回はこれらに関する見解をお話ししようと思います。

 ※建物の省エネ性能については、こちらも参照ください。


まず、語句のおさらいからですが、これらは各所でわかりやすい説明がなされていますので、興味のある方はそれぞれのキーワードで検索してみてください。

ここでは、それぞれのキーワードの大切な概念だけを列挙します。


  • 「高気密高断熱」とは、建物自体の熱の維持性(保温性)を高め、快適性を良くしようという概念
  • 「ゼロエネルギー」とは、建物を活用している(暮らしている)状態でのエネルギー量(金額ではなく、エネルギー単位:ジュール)を、ゼロ以下にしようという概念
  • 「LCCM」とは、地球温暖化対策としての二酸化炭素に着目し、建設開始時~解体まで、更地から更地までの間に排出されるトータル二酸化炭素の量をゼロ以下にしようという概念


これらのキーワードは、同じ系譜で語られることが多いですが、実は全く別の目的を掲げていることがわかります。

しかし、実際の手法は共通する点が多く、基準としての数値目標は時代とともに高い水準に設定されていくため、あたかも「LCCM」という概念が、一番快適な概念なんだと錯覚することがあります。

最新の概念である「LCCM」は、これまでの住宅の省エネルギー化の歩みをすべて内包した高い水準の基準であることは確かです。LCCMの基準をクリアすれば、それまでに提唱された基準の多くは満たすことができます。

  • 建物の保温性が高い
  • 使用する設備が省エネである
  • 太陽光発電によりエネルギーの創出が可能である
  • これらの3つに加え、LCCMでは、建築時及び解体時(リフォーム時も含む)に多く発生する二酸化炭素量を、太陽光発電による二酸化炭素低減効果により賄わなければならないため、太陽光発電期間が長いこと、すなわち建物の寿命が長いことが要求されます。

政策的な流れとして、また住宅性能が進む方向性として、決して間違っていないように感じます。


ところで、これらを暮らす側からの視点で見るとどうなるでしょう?

暮らす側としては、何より快適性につながるかどうかが最大のポイントとなります。

そして、快適性を広義に考えた場合、省エネルギーであることがもたらす快適性は、そのほんの一部にしか過ぎないということがポイントです。

これから家づくりをしようという方が今まで生活していた住環境によっては、暑さ寒さを我慢するのは耐えられない、と感じる場合もあるでしょう。

そこで、少しでも性能の良い建物が、あたかもより快適であるかのように期待をします。

しかし、丁寧に考慮されてつくられた弊社の今までのふつうの家(UA0.56~0.72程度)以上の高性能化に関して、体感として性能向上による快適度の向上を感じることはかなりむつかしいと思います。

例えば、昔の昭和55年基準(これも必達義務ではなかったので、その性能が発揮されているとはとても思えない建物が大部分だと思います。)のUA値1.4以上から、UA値0.6と、半分以下(△1.2以上)も性能が向上すれば、これは体感上の快適性に大きく影響を与えます。

しかし、例えば、次世代基準のUA値0.87からUA値0.6への向上は(△0.27)、体感ではなかなか感じることができず、各種測定器を用いて違いを計測できる、という程度の小ささです。

まして、UA値0.6前後から、UA値0.46(HEAT20基準 現在規定されている最高水準)への向上(△0.14)などは、各種計測機器を用いたとしても、その他の自然条件などを厳密にそろえておかないとその違いを計測できないレベルの違いでしかありません。

この程度の向上に、かなり余分な費用とデザイン的な制約を受けるのは、多くの人にとっての最適解だとは思えません。

設備に関しても、現代の方向性は一昔前の快適性を維持しつつ、いかにエネルギーを少なくするかというものであるため、省エネをあまり気にしない時代に快適性を求めて開発された時代からあまり進歩はしておりません。


つまり、LCCMの基準は、生活者にとっての直接的なメリットとして大きな喜びを得ることはできません。社会の一員として、地球環境に貢献しているということが大きな付加価値なのです。

そういった状況を踏まえると、LCCM基準に費用を投じるというのは、素晴らしいことではあるけど、強制できることではないと感じております。

弊社としては、LCCMの概念は尊重するけれど、数値基準として達成を目指すのは希望の方のみ、という立場をとっております。(^^;





LCCMの概念

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